活動の紹介

手ぶらで気軽に参加できるクリーンアップ。街が綺麗になって、地域の活性化にも繋がる新たなコミュニティ

プロジェクトマナティ

最近では、自分たちが住む街を綺麗にしようと、ボランティアでクリーンアップをする人たちが増えています。しかし、ボランティアで集めたゴミの処分方法は家庭ゴミとは異なります。専用のボランティア袋を配布している地域もあれば、ゴミの収集自体を受け付けていない地域もあります。また、分別方法は地域によってさまざまで、住んでいる地域以外でクリーンアップをする場合、役場に確認する必要があり、非常にハードルが高いものになっています。今回はそのような問題を解決するため、誰でもワンコインで気軽に地域でクリーンアップができる「プロジェクト マナティ」を運営している、金城由希乃さんにインタビューしました。

金城 由希乃(きんじょう ゆきの)
沖縄県出身。株式会社マナティ代表取締役。海の環境保全活動の一環として、クラウドファンディングで300万円の目標を達成し、2017年から「サンゴに優しい日焼け止め」の販売を開始。日本青年会議所主催JCI TOYP 2019で環境大臣奨励賞、生物多様性2018アクション大賞で審査員賞を受賞。2020年からプロジェクトマナティをスタート。

この活動はこんな人におすすめ

・気軽にクリーンアップをしてみたい
・環境問題に興味がある
・地域の人たちと触れ合いたい

なぜ、やる気があって時間もある人がゴミひとつ拾えないのか、ずっと考えていた

この活動を始めたきっかけを教えてください。 

2017年の秋、「サンゴに優しい日焼け止め」の事業で西表島に行きました。滞在中に、レンタカーを借りて海沿いに夕陽を見に行ったのですが、ビーチにはペットボトルなどのゴミがたくさん落ちていて…。すぐに拾おうと思ったのですが、拾ったゴミをどこに持って行けばいいのか分からなくて。知り合いがいない土地だとゴミについても詳しく聞けないし、拾ったゴミを宿に持ち帰っても迷惑だと思ったので、結局ゴミは拾えませんでした。もし、ゴミ箱が近くにあったら私はゴミを拾っていたと思います。でも、ゴミ箱をそこに置けないのは、「管理が難しい」とか、「管理するための費用を捻出できない」とか、結局お金の問題だということに気がつきました。これがきっかけで、ゴミを拾うことは、とても難しいことだと実感しました。私があのとき、お金を払ってでもゴミを拾えたのなら「いくら出せたのかな?」と考えたとき、ワガママだけど「500円なら出せる!1,000円は高い」と率直に思いました。

それからずっとゴミのことを考えていて。「なぜ、やる気があって時間もある人がゴミひとつ拾えないのだろうか」と。西表島ではトレッキングツアーにも参加しました。もちろん自然のことは学べましたが、少し寂しく感じてしまいました。「旅といえばこの人!」みたいな思い出がなかったので。そういった経験から、ワンコイン(500円)で地元の人たちと出会えて、ゴミも気持ちよく拾えて、ゴミ処理もお願いできるしくみを作りたい!と思い立って「プロジェクトマナティ」の準備を始めました。 

クリーンアップをすることで、ゴミ拾いだけでなく地域の活性化にも繋がっていく

プロジェクトマナティに参加すると、どんなことができますか 

参加者は事前準備や片付けの必要がなく、気軽にクリーンアップができます。パートナーのところへ行って500円を支払い、バッグなどのビーチクリーン道具を借ります。パートナーから地域でゴミ拾いができる場所や、市町村のゴミの分別方法を聞いて、マイペースにクリーンアップを始めてください。終了したらバッグごと渡して終了です。パートナーのなかには共同売店を運営している方たちもいるのですが、そこに住んでいる人たちだけだとどうしても消費が限られてしまう。だからこそ、参加者がそこで買い物することで、地域活性化にも繋がっていきます。さらに漂着ゴミが多い場所だと、地域の人たちで頑張っていても終わらない。だからこそ応援が来ると、心の支えにもなるし喜んでくれます。ぜひ地域のことを聞いて、会話も楽しんで欲しいです。
マナティパートナーさんへの基本の受付方法

パートナーとは別に、プロジェクトマナティをツアーに組み込んでいる「ホスト」と呼ばれる方たちもいます。ゴミを拾いながらホストと話ができるツアーから、他の体験と組み合わせたツアーまでさまざまです(料金は2,000円〜)。「地元の人たちともっとゆっくり話をしたい!」という参加者は、ホストが提供するツアーに参加するのがお勧めです。
たとえば「隠れ家カフェ 清ちゃん」のオーナーは、漂流ゴミからシーグラスアートを作られている方です。ゴミ拾いの経験も豊富なので、環境ワークショップのような話を聞くことができます。カフェを営業されている方なので、ツアーの案内は15時からになります。また与論島には、海岸に漂着したゴミをいつでも誰でも拾える「拾い箱」という活動をしている池田さんという方がいます。そういった活動ができる美しい心の人がたくさんいる島で、なぜ拾い箱という活動をしているかについて、直接お話を伺うことができます。 このような方と話をしたい人はたくさんいます。でも、その方の時間は限られているし、会いに行ってたくさん話をするだけだと消耗になってしまう…。だからこそ、ツアーとして料金をつけたら、参加する側も迎える側も気持ちよくゴミを拾えて、それこそサスティナブルだなと思います。

ゴミに対する感覚が人それぞれで違い、地域によっては拾ったゴミを対応できない場合もある

現在、活動をしているなかでの課題や困っていることは?

問題はいろいろありますが、まず「ゴミに対する感覚が、人によってかなり違う」ということ。西表島でゴミを見つけたとき、私はゴミを拾って宿に持って帰ったら、宿の人が困ると思っていました。しかし、宿に持って帰っても、ビーチが綺麗になったから喜ぶと思う人もいる。
実はプロジェクトマナティを提案していくなかで、非常に喜んで受け入れてくれた地域がありました。ゴミは処理するにもお金がかかるし、地域ごとに定められた分別になっているか中身をチェックしないといけない。そうるすと手間賃がかかるのは当然ですよね。でも、地域の人たちは「なんで拾って綺麗にしたのにお金を払うの?」ともし言われてしまったら、どうしても小さくなってしまう。自分たちで言えないからこそ、プロジェクトマナティを取り入れることで、お互いに気持ちよくクリーンアップができる。このように、「拾うだけがゴミ拾いじゃない」ということを多くの人に理解して欲しいなと思います。 

また嬉しいことに、パートナーになりたいという方たちが増えてきています。ただ、地域によっては、拾ったゴミを市区町村で対応できない場合があります。ですので、ゴミ処理方法については事前に市区町村に確認してもらっています。ゴミの分別が原因で、地域によっては話が進まなかったり、気軽にボランティアができなかったりする。そうすると、モチベーションが維持できなくなったり、分別がしんどくなったりする…。そういう地域の方には、「拾うゴミを限定してみたら?」などアドバイスしています。ボランティア袋などを提供している地域は比較的スムーズです。沖縄県庁も非常に協力的で、「逆に困っていませんか?」とお声かけをいただいています。
ゴミ問題は非常に複雑で、小さな島や集落に行けば行くほど問題があります。たとえば海にたまに捨てられている「浮き」は、ゴミ処理施設だと対応できない離島もあって、処理するのに本島まで運ばないといけなくて、さらに輸送費がかかってしまいます。マナティに参加してくれる方たちも、さまざまな地域のクリーンアップに参加して、「ここはたくさん拾えたけれど、ここはあまり拾えなかった」など、そういった地域ごとの違いも学びにして欲しいと思います。

マナティをきっかけに地域の人と会話が生まれたり、地元の人たちしか知らない場所に行けたりする

この活動をしていて良かったと思う瞬間を教えてください。

プロジェクトマナティをきっかけに、知らない地域に行けたり、そこに住んでいる人たちと会えたりできるのが楽しいです。長崎県の野母崎という地域にもパートナーがいますが、プロジェクトマナティをきっかけに知ることができた地域です。沖縄本島でも国頭村に行く機会はほとんどないのですが、国頭村はパートナーがたくさんいて、すごく盛り上がっています。このように、普段は通り過ぎてしまう地域でも、プロジェクトマナティに参加することで、地域の人と会話をしたり、地元の人たちしか通らないような場所に行ったり、という体験ができるのです。しかも、マナティに参加した皆さんと共有できるというのが、すごく嬉しいですね。参加した人たちが同じような人と出会えて、同じ場所に行けることって非常にプライスレスだと思っています。

プロジェクトマナティを始めて気づいたのですが、ゴミって非常に良いトピックだなと。小さな地域ほど、知らない人たちが歩いていると、地元の人たちに「あの人たちは誰?」と思われたりするかもしれませんが、マナティの黄色いバッグを持っていると「お金を払ってゴミを拾っているの?」とすごく優しくしてくれる。ゴミをきっかけに地域のことが知れたり、話をするきっかけになったりします。 小さな集落こそ、いい意味でも浸透するのが早いと思っています。

世界中のどこでもプロジェクトマナティができるように、パートナーを増やしていきたい

今後の目標を教えてください。 

世界中でプロジェクトマナティができるように、いろんな場所で、いろんな人に出会えるしくみを作っていきたいです。目標は、富士山でもプロジェクトマナティをできるようにすること!そして、海外でも安心して訪ねていけるようなパートナーを増やしていきたいと思っています。
このプロジェクトは、「ゴミを気軽に拾えたら、みんなが環境について一歩踏み出せるんじゃないか?」という思いが始まりだったのですが、地域にはゴミの問題以外にも、「過疎化」「開発問題」「少子化」など、さまざまな問題があります。地域に入り込まないと分からないことが、プロジェクトマナティに参加することで、誰でも簡単にその情報に触れることができる。その地域で起こっている出来事を感じられるプロジェクトだと思うので、ぜひいろんな人に参加して欲しいと思います。 

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プロジェクトマナティ

2020年よりプロジェクトスタート。​準備や片付け不要で、ワンコインで気軽に始められる地域と地球に優しいクリーンアップコミュニティ。 現在は沖縄を中心に、長崎、鹿児島を含めて約60のパートナー・ホストがプロジェクトに登録。全世界でパートナーやプロジェクトを募集中。 パートナーに支払う500円の内訳は(プロジェクトマナティ…備品・事務局費250円/パートナー・ホスト…ゴミ処理等手数料250円) 寄付については「企業協賛」「個人寄付」の2種類が用意されています。